ログハウスの歴史について
ログハウスの歴史は古く、 北欧を起源として発達してきた建築物で、発祥の地とされる地域ははっきりとしませんが森林資源が豊富という共通点を持った地域を中心に発達してきました。
これらのログハウスが現在の原型を成してきたのは、 1700年代の北米大陸への移民とそれ以前からあった北欧系のログハウスの二つに分かれます。
北米大陸のログハウスCONTINENTAL NORTH AMERICA
北米大陸では北欧系の移民たちが各地へ居住する際、現地へ急造で建てたものが他の移民者たちにも伝わり改良され開拓者たちの象徴とも言える建物となっていきました。
またのちに発生する南北戦争などで発生した移民を通じ カナダにもログハウスが波及していきます。
しかし西海岸への交通手段も確立され開拓時代も終了する20世紀になるとログハウスは必要がなくなり、ログキャビンで生まれ大統領となったリンカーンの「from log cabin to White House(ログハウスからホワイトハウスへ)」の言葉のように貧しさの象徴となっていきました。
1960年代に入りヒッピー文化を起源とした自然回帰の気運が高まると、自然の中での生活を求め再びログハウスが注目されていき、現在はカナダやアメリカなどで別荘などとして再評価されていきます。
アラスカでは17世紀末ゴールドラッシュが起き、その際に大量の労働者が流れ込みログハウスが建築されました。ゴールドラッシュ後も広大な土地へ開拓者や自然回帰者が移り住み、現在でもセルフビルドログハウス文化が受け継がれており、 北米地域ログの歴史を垣間見ることができます。
北欧のログハウスNORTHERN EUROPE
北欧では1000年以上の木造建築の歴史を持ち、その中で発達していったログハウスはマシンカットログと 呼ばれるものへ進化しました。マシンカットログは工場で製造されたログ材を使うことにより、システマチックに作り上げられることが可能になり、設計の自由度の高さや特殊な技術を必要としないのも特徴です。
北米ログが工芸品であれば北欧ログは高い工業力で作り上げられた工業製品といえます。またマシンカットログハウスは角ログと呼ばれる長方形のログ材を使うことが多いのも特徴で、丸ログとは見た目も内部の間取りも全く違ったものになります。
日本のログハウスJAPAN
日本国内では古くは正倉院の校倉造や中部地方の板蔵造などもログハウスの中へ含まれます。
また昭和8年には上高地の帝国ホテルが作られ、これも近代ログハウスの源流といえます。
本格的なログハウス建築が始まるのは1970年代からで、各地で輸入ログやハンドメイドでログが作られ、アウトドアブームとともに大きく成長しました。当協会の会員の中にもこの時代から活躍されている方々が多く参加されています。
その後国内では様々なメーカーがマシンカットやハンドカット、またポスト&ビームやティンバーフレーム、ピーセンピースといった多種多様な形式のログハウスが普及し当初のログキャビンから 住宅としてのログハウス、さらに健康で快適な住空間をお届けする本格志向の住まいとして進化し現在に至っております。
ログハウスの仕組み・構造
一般的にログハウスとは丸太を横にして積み上げて壁を構成し、 その交点で丸太をお互いに切り欠いて組み合わせたもので、 日本の建築基準法では「丸太組構法」と呼ばれています。
「丸太」と呼んではいますが、実際の断面形状は丸い物だけではなく、長方形に加工した物も含みます。
日本には古来より正倉院などにも使われている「校倉(あぜくら)造り」と 呼ばれる構法がありますが、基本的な仕組みは「丸太組構法」と同じです。
ログハウスは大きく分けると、手加工の丸太をそのまま使用するハンドカット ログハウスと、角型、D型、丸型などに機械で均一に製材したログ材を使用する マシンカットログハウスに分類されます。
また「丸太」を柱、梁として組み合わせ建物を造る構法を「ポスト&ビーム」と 呼び、これもログハウスの一部とされています。 「ポスト&ビーム」は「軸組構法」の一種となります。
ログハウスは使用する樹種、ログ材の断面形状、
交差部(ノッチ)の形状、構造などによっても様々に分類されます。
ログ材の樹種による分類
大きくは国産材とヨーロッパ(主に北欧)、北米からの輸入材に分けられます。ハンドカットとマシンカットではよく使用される樹種が異なります。
- 国産材スギ、ヒノキ、カラマツ、エゾマツ、トドマツなど
- 欧州材欧州赤松(パイン)、ドイツトウヒなど
- 米 材ベイスギ、ベイツガ、スプルース、ロッジポールパイン、ホワイトパインなど
ログ材の断面形状による分類
大きくは長方形断面、円形断面、屋外が円形で、内側がフラットなD型断面に分けられます。
交差部(ノッチ)の形状による分類
大きくは交差部から屋外側にログ材が突き出す「プロジェクトタイプ」、突き出しのない「フラッシュタイプ」に分けられます。
構造による分類
建築基準法の「丸太組構法技術基準」では、1階、2階の構造により以下のように分類されています。
[参考文献]2003年版 丸太組構法技術基準解説及び設計・計算例ログハウス選書13 ログハウス建築大全 地球丸
ログハウスのメンテナンス
どんな工法で建てられた家でも、その工法に合わせたメンテナンスが必要です。
天然の木を使うログハウスは、建物完成後、一般的に2から3年間程度はログハウス独特の「セトリング」(木の収縮による壁の沈み込み)がおきます。
この期間はボルトの増し締め、柱や階段、建具廻りの調整等が必要です。
乾燥収縮による割れからログを保護するために、外壁の定期的な塗装をお勧めしています。
適切なメンテナンンスやお手入れを行えば、ログハウスは大変寿命の長い建物です。
主なメンテナンス項目
ログハウス特有のメンテナンス項目には以下のようなものがあります。
- *以下は標準的な項目例であり、実際のメンテナンス項目は仕様や設計等により異なります。
- *「丸太組構法住宅工事仕様書」より抜粋・編集
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乾燥収縮(セトリング)進行中のメンテナンス
ログ壁の収縮に合わせて通しボルトの下に設けたナットのゆるみを締め直します。
標準的には竣工後6ヶ月、1年後、2年後、大断面丸太材を使用している場合は3年後にも行ないます -
建具周りすき間のメンテナンス
窓ドア上部の収縮スペースの点検や、丸太材に隙間が生じている場合のシーリング材等の充てんを行ないます。
また必要に応じて調整材、開口(ドア・窓)廻りの側板の調整、建具枠、建具の調整を行ないます。 -
日常のお手入れ
初期のセトリング終了後も、紫外線や汚れ、雨水の影響、虫害等の点検を定期的に行ない、異常があれば必要な措置を行ないます。
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丸太材等の保護(防腐・防蟻措置)
外壁は早めにメンテナンスを施すことにより、ログを保護し建物を長持ちさせることにつながりますが、乾燥収縮により日割れから雨水が侵入しているような場合には防腐剤塗布等必要な措置を行ないます。
ベランダ、テラス等も自然環境に大きく左右される部分ですので、定期的な点検と早めの対応が大切です。 -
樹液(ヤニ)のしみ出し除去
からまつ、べいまつ等樹脂を多く含む樹種は、建物の乾燥後に樹脂がしみ出してくる事があります。
その場合は金属版、ナイフ等で欠き取る、有機溶剤(アルコール等)を染み込ませた布等で拭き取るなどの措置を行ないます。 -
その他
結露やカビの有無、ストーブなどの暖房器具廻りのチェックも行ない、異常がある場合は対処します。
[参考文献] 丸太組構法住宅工事仕様書(平成23年度版)








